株式: 日経平均小幅続落
3連休を控えた東京株式相場は、日経平均株価が小幅続落。週間ベースでは6週間ぶりに下げに転じ、低調な内容が続いた米国の経済統計と、予想以上に年度を通した業績見通しに慎重な姿勢を続ける国内企業の姿勢を背景に、日本株投資への自信が揺らいだ1週間だった。 日経平均株価の終値は、25円24銭(0.2%)安の1万6350円2銭、TOPIXは3.49ポイント(0.2%)安の1619.02。東証1部の売買高は概算で15 億2606万株。 シンガポールに運用拠点を置くアバディーン・アセット・マネジメントの日本株運用部門ディレクター、パスカル・マス氏は「アジア、欧米での販売増加や円安で日本の輸出企業の業績は良かったが、一方で上方修正企業が少ない理由として、原料高が挙げられる。これは多くの内需企業にとっても難しい問題。また、今年の内需には、期待値が高かった消費の弱さも影響している」と話していた。 米ISM指数で心理悪化 この日の東京市場は、米国市場で1日に発表の米供給管理協会(ISM)製造業景況指数が予想比で下振れ、景気の先行き不透明感からナスダック総合指数を中心に同日の米国株が下げた流れを受け継いだ。1日のナスダック指数の終値は1.4%安で、下落率は9月6日以来、約1カ月ぶりの大きさ 米景気の影響を受けやすい電機株のほか、業績低調が確認されたブリヂストン、旭硝子などに売りが先行した影響から、日経平均は午前の取引で一時、前日比166円(1%)安の1万6209円まで下げる場面があった。今週1週間の取引時間中の安値を見ると、前週末終値の1万6669円に対し、週初の10月 30日に1万6329円まで一気に落ち込んだ後、1万6314円、1万6246円、この日の1万6209円とじりじりと水準を切り下げた。 米ISMが発表した10月の製造業景況指数は51.2と、前月の52.9から低下、2003年6月以来の低水準に落ち込んだ。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値53.0も下回った格好だ。 裁定買い残5兆円の重し また需給面では、裁定買い残が史上初の5兆円の大台に乗ったことも上値抑制要因として作用。相場全般の上値が重くなると、先物への売り圧力が現物との裁定解消売りを誘発するリスクが高まるためだ。 東京証券取引所が1日に発表した前週末10月27日時点の裁定買い残は、金額ベースで前週末比2360億円増の5兆824億円に達した。株数ベースでも1億2718万株増の28億2841万株と、04年3月9日の29億300万株以来の高水準。新光証券エクイティ情報部の三浦豊シニア・テクニカルアナリストは「先物に外国人買いが継続している間は問題ないが、いったん買いが止まると需給懸念要因として意識されそう」と指摘している。 米雇用統計、ボリンジャーバンド ただ、安値をつけた後は徐々に下げ渋り、取引終了にかけては先物主導で NKZ6 Index急速に下落幅を縮小。先物を売り持ちしていた向きは3連休を控えて買い戻しに動いたとされ、さらに3日には米国市場で為替、金利動向に影響を与えそうな雇用統計の発表もあり、米国株、金融市場の反応を見たいとして一方的な急落にはならなかった。 この日の日経平均は、1万6200円台で何とか下げ止まった格好。テクニカル分析の1つであるボリンジャーバンドを見ると、2標準偏差の下限(マイナス2シグマ、1万6244円)に接近したため、いったん下げ一巡ムードが出やすかった面もある。ボリンジャーバンドは、移動平均と標準偏差を使って相場のレンジを予想するテクニカル指標の1つで、一般的に標準偏差の2倍以内に入る確率はおよそ95%と言われる。 金融や電機、ガラス弱い 東証業種別33指数の騰落状況を見ると、値下がりは銀行、電機、その他金融、証券・商品先物、小売り、ガラス・土石製品、機械、情報・通信、不動産など19、値上がりは輸送用機器、繊維、医薬品、海運など14。 個別では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、りそなホールディングスなのほか、中間期利益の増額修正で前日は高かったみずほ信託銀行など銀行株が下落。相場低迷を受けて野村ホールディングスなどの証券株も軟調で、UBS証券などが目標株価を引き下げた武富士をはじめ、グレーゾーン金利の廃止公算をめぐる業績懸念が強いその他金融株も弱かった。 米ISM製造業景況指数の予想比下振れや、米ナスダック指数の下げを受けてハイテク株にも軟調な銘柄多く、ソニーやキヤノン、松下電器産業、東京エレクトロンなどが売り先行。台湾の液晶ガラス設備の不調を理由に、2006年 12月期業績予想を減額した旭硝子など、ガラス・土石株の下げも響いた 業績懸念が根強いライオン、コロワイドが下落率上位に並び、午後に入って中間利益を下方修正した日精樹脂工業は急速に売り込まれた。 スズキや帝人、綜合警備、参天薬高い これに対し、欧州やアジア向けの低燃費小型車需要の強さから、業績予想を上方修正したスズキが3日続伸。高機能繊維や医療分野の好調で、安定的な業績に評価が出ている帝人は4カ月ぶりに700円台を回復。好業績を受けて日興シティグループ証券が投資判断を買いに引き上げた日本ゼオン、ゴールドマン・サックス証券が買い判断を示した綜合警備保障などが高い。 住友ベークライトによる株式公開買い付け(TOB)で、TOB価格にさや寄せする動きが続く筒中プラスチックは上昇率1位。海外での玩具好調で、中間利益を増額修正したタカラトミーも大幅高。 日本郵船や商船三井、川崎汽船など大手海運株も小幅高。郵船は1日、鉄鉱石や石炭などのバルク貨物と原油の荷動きは、今後も中国の需要がけん引、今までのような高い伸びは期待できないものの、拡大は10年後まで続くとの見通しを発表した。 中間業績が従来の減益から一転増益となり、クレディ・スイス証券が投資判断を強気に引き上げた参天製薬を中心に医薬品株も堅調。 新規上場のメンバーズ、1年7カ月ぶりの売り気配終了 国内新興市場は、ジャスダック指数が0.45ポイント(0.5%)安の88.18、東証マザーズ指数が19.94ポイント(1.7%)安の1177.18、大証ヘラクレス指数が43.42ポイント(2.2%)安の1911.18とそろって下落。この日名証セントレックスに新規上場したメンバーズは、公開価格29万円に対し、20万2000 円の売り気配のまま初日を終了。新規上場初日が売り気配のままだった銘柄は、 05年3月のエフェクター細胞研究所(セントレックス市場)以来、およそ1年7カ月ぶりのこと。 1日に東証1部に上場したアコーディア・ゴルフは公募価格を割り込み、ジャスダック上場の三洋堂書店も初値上昇後は急落するなど、回復基調にあった新規上場は再度不振の状態に陥っている。インターネット広告やウェブ製作を手掛けるこの日のメンバーズに関し、市場では「直近上場銘柄の値動きが振るわなかった上、業態の割に今期減益、PERにも割安感がない」(SBI証券投資調査室・藤井知明次長)との声があった。 ジャスダック市場の売買代金上位では、楽天やファンドクリエーション、SBIイー・トレード証券、インデックス・ホールディングス、オプト、YOZANなど金融、ITを中心とした時価総額上位銘柄が下げ、UBS証券による投資判断引き下げ以来、業績に弱気の見方が続く遠藤製作所は4日続落。 一方、メニュー戦略の奏功で客単価向上が続き、通期業績予想を増額修正した日本マクドナルドホールディングスが小幅高。日本マイクロニクス、レーサムリサーチ、サンフロンティア不動産などが上昇し、1対3の株式分割を1日に発表したピーアンドピーは上昇率1位。 東証マザーズでは、GCAやサイバーエージェント、日本M&Aセンター、アクロディア、ブイ・テクノロジーなどが大幅安。ネクスト、エリアリンク、DNAチップ研究所などが高い。 大証ヘラクレスでは、アセットマネジャーズ、ダヴィンチ・アドバイザーズ、ジェイピーエヌ債権回収、大阪証券取引所など金融、不動産関連の下げが目立ち、オンリー、ジェイテックは上昇。産業廃棄物調査のアミタも高く、中間期の経常赤字幅が従来計画の1億800万円から6800万円に縮小すると、1日に発表している。 ニュース|株|株式 |